ヨミメグリ

SUSHI-BU! 1貫目

SUSHI-BU! 1貫目 (ファミ通文庫)
西野吾郎 (著), よう太 (イラスト)

あらすじ

どうも、イソノカツオです。高校入学早々、この名前のせいで、変な女に目をつけられました。「おれっちは世界一の寿司職人、すなわち世界一の江戸っ子になる女でぃ!」生粋の静岡生まれのくせにそう名のる江戸前素子。おかげで『江戸前寿司部』なんて部に入るはめになった。寿司作りとかはどうでもいい。俺は美しき越戸紫先輩とお近づきになりたいんだ。だから先輩、素子じゃなくて俺を見て!第13回えんため大賞特別賞。

感想

奇抜なネタのインパクトとテンポの良さにどこか新鮮な笑いをもらいました。
細かいこと気にしなければ楽しいこと請け合いの青春寿司部活コメディ。目指せ全国制覇!

もうとにかく最初のインパクトが強烈です。なぜ部活で寿司なのか? え、ナマモノ?
最高の江戸っ子・江戸前寿司職人を目指す「静岡出身」の江戸前素子に、自称「普通」の主人公イソノカツオは入学早々拉致されます。
そしてその名前だけが理由で江戸前寿司部へ勧誘されるのです。
わけがわかりません。必要ないかもしれませんがWikipediaから補足すると、

江戸っ子
江戸っ子(えどっこ、江戸っ児)とは、江戸で生まれ育った生粋の江戸の住民を指す呼称。
後世の典型的な江戸っ子像として「細かい事にはこだわらず商売下手、意地っ張りで喧嘩早く、駄洒落ばかり言うが議論は苦手で、人情家で涙にもろく正義感に溢れる」・「いきでいなせ」と言われ、夏目漱石描く『坊ちゃん』の人物像がその典型である。
Wikipediaより引用 – http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E3%81%A3%E5%AD%90

江戸前寿司
江戸前ずし(えどまえずし)・江戸前鮨・江戸前鮓・江戸前寿司は握りずしを中心とした、江戸の郷土料理である。世界共通語となった「sushi」は主にこの「江戸前ずし」を指す。古くは「江戸ずし」「東京ずし」ともいった。江戸前の豊富で新鮮な魚介類を材料とし、一般家庭で作られることがほとんどない、寿司屋の寿司職人が作る寿司である。
Wikipediaより引用 – http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E5%89%8D%E5%AF%BF%E5%8F%B8

とのことです。静岡出身では江戸っ子になれないんじゃ?
でもそんな疑問を余所に、見た目ロリポニーテールの部長が江戸っ子像を体現し、無理を通して道理を引っ込めるその心意気……正直好きです買った!
心の中でツッコミを入れつつも、出だしから何をやってくれるのかとワクワクした気持ちになりました。

最初は入部を断固拒否するカツオですが、ボーイッシュな口調で美人の副部長、紫先輩に一目惚れし入部することになります。
いきなり結婚を申し込むあたり、あっさり「普通」のメッキは剥がれてしまいました。
もちろん結婚は断られます。紫先輩は男に興味がなく、部長LOVEだったのです!(その他ロリショタBLも好き)
キマシタワー?

それから江戸前寿司部は正式な部と認められるため部員集めを行うのですが、「部長の思いつき→カツオのツッコミと抵抗→紫先輩にお願いされ手のひらを返す」とパターン化しつつも小気味良いテンポでした(寿司部なのに天丼)
そして集まる部員が、可愛いメイド服が似合う男の子とツンデレ暴力系ヒロイン。記号的な要素が前面に出てる感じもしますが、それぞれに味のあるエピソードがありました。
少年少女の甘酸っぱいすれ違いと誤解を解くため寿司を用いる部長には「意外と料理漫画っぽい?」と思ったりしましたが、ツンデレ暴力系ヒロインの少女が見せる意外な姿はギャップもありキュンときました。

部員が集まり正式な部として申請するため動き出す江戸前寿司部ですが、ここで登場するのがそれを妨害する部。
詳細は書きませんが、呆気に取られると同時に盛大にツッコミを入れてしまいました。
何その部!? そして部員!!
あえてヒントを書くなら「ヤスとアニキ」です。イラストのインパクトも更に強烈でした。

窮地に追い込まれた寿司部はこれをどう切り抜けるのか。
また料理漫画のように寿司の力で感動のフィナーレを迎えるのか。
そう一筋縄ではいきませんでした。強烈なインパクトで惹きつけてテンポ良く読ませてくれたこの作品、最後もやってくれました。期待を裏切りません。
最高の江戸っ子・江戸前寿司職人を目指す部長から放たれた必殺の心寿司、その威力は凄まじく、最大級のツッコミと笑いをもってして楽しませてもらいました。

細かいこと気にせず楽しめれば、個人的にとても笑いの琴線に触れる作品でした。
ごちそうさまですオアイソお願いします。