プシュケの涙 (メディアワークス文庫)
柴村 仁 (著), 也 (イラスト)
あらすじ
夏休み、一人の少女が校舎の四階から飛び降りて自殺した。彼女はなぜそんなことをしたのか?その謎を探るため、二人の少年が動き始めた。一人は、飛び降りるまさにその瞬間を目撃した榎戸川。うまくいかないことばかりで鬱々としている受験生。もう一人は“変人”由良。何を考えているかよく分からない…。そんな二人が導き出した真実は、残酷なまでに切なく、身を滅ぼすほどに愛しい。
感想
失楽を知るからこそ、ラストの幸せな情景がよりいっそう切なく。
前後の構成で二人の「彼方」の涙に触れていたんだと気付きました。
前後の構成で二人の「彼方」の涙に触れていたんだと気付きました。
全編通して読むと、これはやられたと思える見事な構成でした。
物語は少女が飛び降りる瞬間を目撃した榎戸川の視点から始まります。その中で描かれる吉野彼方は無遠慮で無神経、突然感情のタガが外れたり、周囲から宇宙人と呼ばれるのも納得できる奇怪な人物として映りました。さらに、吉野彼方が少女の死の真相を探るために取る行動は執拗で手段を選ばず、少女との間に何があったのかと思わずにはいられませんでした。
物語は少女が飛び降りる瞬間を目撃した榎戸川の視点から始まります。その中で描かれる吉野彼方は無遠慮で無神経、突然感情のタガが外れたり、周囲から宇宙人と呼ばれるのも納得できる奇怪な人物として映りました。さらに、吉野彼方が少女の死の真相を探るために取る行動は執拗で手段を選ばず、少女との間に何があったのかと思わずにはいられませんでした。
サスペンス色はあるものの、様々な謎に戸惑いやひっかかりを覚えたのが前半。
今思えばそれらは後半で絶妙な苦さと痛みをもたらすスパイスだったのかもしれません。
優しいだけじゃない青春には、切ないほど涙が相応しく感じました。
以前、読んでからハッとしたライトノベル表紙という記事を書きましたが、この作品の表紙が何を象徴しているのかを考えると思わず溜息をつくような切なさを感じました。